場所の虚しさ




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「行ってみたいところあるねん!」

何回も訪れている場所をはじめてのように演出し、アポを組む。向こうは楽しそうにしている(いるように見せてくれている)が、当日の景色は本当にくだらない。見慣れた街並み、空気感、フリー音源が適当にかかった店内、あんなに憧れていた都会はいつからか、女を必死に口説き落とそうとする記憶としか結びつかない土地に様変わりした。

普通であればここを誰と歩きたいか、あるいはかけがえのない誰かと歩いた記憶を浮かべるはずだ。しかし、浮かんでくるのは特に思い入れもない代替可能な女たちで、食い付きを上げきれずに食事だけで解散した女、つまらない夜を過ごした女、たくさんの好意を伝えておきながらも急に連絡がつかなくなった女、とにかくムカつく女。

ある特定の場所が自らの大切な思い出と結びつかなくなること、それが場所の虚しさ。