2022-01-01から1年間の記事一覧

エンドロールに名前が無かった

段ボールから荷物を取り出す。これも何度目だろう、慣れたものだ。友人や愛していた景色はとっくに捨てて今ここにいる。前の住人の趣味を疑うこの変な香料の匂いの部屋で暮らしをはじめることに多少の嫌気が差しながらも、今は部屋の整理をさっさと終えなけ…

ナンパを続けるための

恋仲の成立や肉体関係の構築のために、女に声をかけて楽しませたり誘惑するのがナンパだ。 もっとも、他者を楽しませたり誘惑することは自らの精神的な余裕が必要なのにも関わらず、この行為を日常的に継続していると、女からの拒絶を断続的に浴びるが故にス…

徹夜の攻防、暴発と賢者。

懇意のスト師にクラブナンパの誘いを受け、午後22時前にUで落ち合う。クラブに行ったことは今まで一度も無かった。夕方には躍起になってカラオケ連れ出しを果たすも破綻。精神的には苛立ちが募っていたが、人生初の箱でGETを果たすと意気込んで苛立ちを抑え…

駆け抜けよ

鬱陶しい梅雨をぬけてこれから夏を迎えるという頃、もうすっかり準備の整った強烈な陽射しのもとで真っ青に染められた高い空を見上げていると、ここではないどこかへ行きたくなる。都市生活者というのはそういうものなのだろう。人の欲望や、疲れるほどの情…

蕩尽

磨いたばかりの口から慣れていない歯磨き粉の味がする。さっきまで壁に打ち付けられた水の音はいつしか止まっていて、しばらくすると風呂場のドアから女が出てくる。ずっとメッセージと電話口である程度の身体を想像していたが、思っていたよりも引き締まっ…

人の救えなさ

活動をはじめて3週間にも満たない、見様見真似で声かけをやっていた時期に平日の夕方、人の少ないショッピングモールで出会った短期大の子と、ついには連絡がつかなくなった。恋人関係を結ぶことをせずに寄り添おうとした、約半年の不思議な間柄だ。 ナンパ…

グッバイ

昨日と今日の境目の無いふしだらでだらしのない毎日を送っているせいで寝床に就く時間がバラバラである。どうにかしてルーティンという軸を生み出さなければならない。何でもいい、日付が変わる頃に目を閉じて、外が明るくなれば目を開く口実を。 近頃思うこ…