徹夜の攻防、暴発と賢者。


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懇意のスト師にクラブナンパの誘いを受け、午後22時前にUで落ち合う。クラブに行ったことは今まで一度も無かった。夕方には躍起になってカラオケ連れ出しを果たすも破綻。精神的には苛立ちが募っていたが、人生初の箱でGETを果たすと意気込んで苛立ちを抑えつつ、攻撃性を前面に押し出す。目的地はM箱、到着するが身分証不十分であったため、本人確認がとれず入場不可。引き返したUでも同様の結果に終わった。

あっけない、始まってすらいない。作り込まれた気持ちは一瞬にして崩れ去った。

選択肢はもう路上徹夜声かけの他ない。とはいえ平日のUは地獄だ。大都市でありながらMのような夜通しの盛り上がりを見せることはない。かつて誰かが「Uは巨大なローカルエリア」と称していたのを見たことがあるがその通りで、夜が更ければ街はブラックアウトだ。仕方なく商店街を歩き回って二人で声をかけていく。反応はどれも渋い。よく見れば不良くずれや、野生のサラリーマン集団が手当たり次第雑に声をかけていくものだから無視を決め込む態度が固い。二人組を見つけては声をかけるも連れ出せない。仕方なく商店街を抜けてドン・キホーテ前で張っていると美女が一人歩いている。相方が声をかけ、軽い手品をフックに連れ出し。コンビニで奢らせ、二人で手を繋ぐが家が近く、帰りの買い物に付き合わされていただけだった。短時間の嘘ロマンス溢れる帰り道。女の人生というのは、こんなただの帰り道にでさえロマンスが否応なしに入り込んでくるのであろう。

体力が尽きてきた頃なのでここで居酒屋に入る。酒と飯モノをがっつり身体に注ぎ込みながら会話を展開する。互いの人となりに軽くではあるものの、自然と触れるので、“ナンパ師”という認識から“ひとつの人生を背負った人”という認識に変わる。自分はこの瞬間がとてつもなく好きだ。

俺たちなんていうものは日本的な世間から見れば異常者だ。しかし、その異常者になって声をかけることにのめり込むのっぴきならない事情がそれぞれの人生にはある。これを見ているあなただってそうでしょう。機会があればあなたの人となりも、ぜひ聞かせてほしい。

それなりに盛り上がったところで店を後にする。夜も完全に更けて人通りはさらに少なくなる。いよいよ諦めの気持ちが高まってきたところで、シャッター街の暗いところに座り込む女二人組を確認する。かわいい顔立ちの黒髪センター分けとギャル感満載の派手アクセ派手ネイル胸元チラ見え金髪センター分けシコ女の二人。

オープナーは適当だったが反応があればなんでもいい。すかさず相方に一人の女の側に寄ってもらう。この時、GETを考えていた金髪は彼が担当することになったが、もう一人もとにかく会話数を重ねてGETにつなげられればいいと踏んで会話をはじめる。聞くところによれば20未満の学生、似たような連中に声をかけられたが、黒髪の女の子が不満だったらしく、それに金髪も従って解散し、三軒目を探している云々といった具合だった。三軒目という提で、とりあえず二人を移動させる。移動のタイミングで位置関係が変わったことで、金髪を自分が担当することになった。自己開示をしながらドン・キホーテに向かう。金髪は多少の警戒心を見せながらも、テンションは高く、とにかく俺に酒を飲ませようとしてきたり、さっきまで嘘をついていた大学名を開示してきたり、さらに逆ハンドテスト的な具合で手を繋ごうとしてきたりと、情報量に圧倒されて多少の動揺をしながらもそれに応じた。躊躇いがない。しかし、その躊躇いのなさに怯んでいると一瞬にして主導権を奪われて終わりだ。店内で和んでいると、いつの間にか相方と黒髪を見失ってしまう。金髪は四人でどこか店に入るつもりだったそうで、位置情報サービスを起動して黒髪の現在地を確認する。二人が郊外に向かっていくことを不信に思い、少しの怒りをあらわにする。夜の街に慣れた即系の女が何を不信に思うことがあるのか全く意味がわからなかったが、野生が強引で夜の女は友情グダがあるという話を聞いていたので、それに近い何かだろう。金髪は黒髪に何度も電話をかけ、また、俺が相方に電話するように何度も促してくる。結果として同意の下、相方は黒髪をGETしていたことが分かり一件落着。四人で再度、コンビニで落ち合った。

一段落するも、金髪の怒りで空気が悪くなったことから会話の主導権を握りにくくなる予想ができたので、自分が怒りの態度を金髪に見せてコンビニで飲み物を買わせる。後に黒髪が解散を打診してきたのでその通りに従う。ここで金髪に謝罪、向こうも何度か謝ってきたので再度和み直し。そこからまた別のコンビニに向かい、酒を買ってラブホテルに搬送する。まさかだった。回り回ってこの金髪シコ女と個室に入ったのだ。酒も進み、人生2回目のGTでこのレベルを搬送したことでテンションがおかしくなり、キス中に我慢汁が大量に溢れ出てしまう。しばらく話し込み、金髪の「眠い」という言葉をフックにベッドへ流れ込む。「眠いグダ」がありながらも、脱がせてキスをしたときにまさかの暴発。一瞬にして賢者状態に陥ってしまった。酒のせいか勃起しない。時間もない、負けを悟った。

着替えて二人で話をはじめる。「眠くてすぐにできなかったごめん」「する気持ちはあった」などと女は言っていたがもうそんな言葉は嘘だ。どうだっていい。興奮が頂点に達して暴発したダサさと、女を完全に目覚めさせるような魅力がなかったことから自暴自棄になって糸が切れた。女の携帯を渡してもらって、自分のインスタとラインの両方を削除した。女と会話をする気にもならない。二人で部屋を後にするが、一緒にいるのが苦痛だったので撒くようにして早足で立ち去る。